奄美大島の南西端にひっそりと息づく集落、西古見。集落内には野鳥の声と波の音のみが響く。36人足らずの小さな集落が、世界最大級のクルーズ船寄港地の誘致候補としてあがっていた。

 

 しかもこの計画は町民に対して秘密裏に2017年からロイヤルカリビアン社と国土交通省、鹿児島県、瀬戸内町によって着々と進んでいたのだ。

 

 今年、平成31年2月1日に政府が「奄美大島、徳之島、沖縄北部及び西表島世界自然遺産候補地」の再推薦書をユネスコに提出した翌日2月2日に、「第4回クルーズ船に関する誘致協議会」において、あろうことか世界自然遺産申請地である西古見に、ロイヤルカリビアン社から異例の『独占大型クルーズリゾート計画が非公開プレゼン』で実施されたのだ。

 

 ロイヤルカリビアン社の計画によると、最大22万トン級の大型クルーズ船が、毎年3月から11月まで週に3回、1日5000~7000人もの観光客を中国から、この西古見の独占リゾート地へ連れてくる。そして、加計呂麻島の各集落の海岸でマリンスポーツ観光を満喫する事になる。


 

想定されている船:世界最大級のクルーズ客船「オアシス・オブ・ザシーズ」

●総トン数:22万トン 排水量:約10万トン 全長:361m 幅:64.9m 高さ:72m

旅客定員:5400名(最大6300名)乗組員:2160名 合計:7560名(最大8560名)

●カジュアル市場向けの薄利多売型大型客船(中国では¥5,000~¥8000/泊で販売されてい)

●運航予定3月から11月のみ、最初は週1回、後は週3~5回

●アジアクルーズの多くは、上海➡熊本八代港(決定)➡鹿児島(決定)➡奄美西古見(未定)➡沖縄那覇港(決定)

 ※国土交通省港湾局情報

瀬戸内町が計画している西古見地区への大型クルーズ船誘致について、私たち『奄美の自然を守る会』が反対している具体的な理由は、下記のとおりです。     

●説明会の開催は30数名の一集落のみしか行われていませんでした。

西古見集落は、人口30数名ほど。瀬戸内町の人口は平成29年12月末で9009人。1週間に町の人口を超える人数がやってくるこの寄港地誘致計画について、2018年2月8日現在、西古見集落以外の町民に対して、「説明会」は開かれていませんでした。

●要望書提出の各種団体は、臨時総会すらも開いていませんでした。

町は、各種団体から誘致実現に向けた取り組みを求める要望書の提出を受けたと言っていますが、どの団体も会員向けの説明会も無く、臨時総会も開かれず、理事会すらも開かれていない団体もあります。押印の事実は一部役員のみが知っていたことです。

後日、町に一団体から説明会の要望をしても、聞きたい人は各自窓口に来るようにとの回答でした。

●西古見集落の「後世に残すべき自然や歴史・文化を守った上で計画を進めて欲しい」という希望は叶うのでしょうか。

町は、 奄美大島各地に日帰りで行けるツアーの開発をはじめ、寄港地周辺でマリンレジャーや飲食を楽しめる施設を整備したい考えを表明しています。

町がいう「利用可能な」後背地には100年以上も手つかずの自然林に希少動植物が生息し、旧日本軍の観測所や兵舎など貴重な戦跡が残っています。

●西古見集落の生活環境は守られるのでしょうか。

長時間のアイドリングにより汚染物質が排出され、集落生活環境の悪化、酸性雨による後背林の荒廃、それに伴うサンゴ礁や稀少動植物への悪影響はまぬがれません。いくら最先端技術で汚水処理装備されたクルーズ船でも、下船してしまえば、周辺集落のトイレを利用するしかないのです。1日5000人のためのトイレ設備、ゴミ処理場、瀬戸内町はどう考えているのでしょうか。

そして、一週間に3度、乗組員含めた24000人分の水の補給はどう対応するのでしょうか。集落の水源はどうなるのでしょうか。

●奄美大島全体の観光に関わる大問題です。「奄美ブランド」の危機です。

週に1万5000 人以上来島する外国人観光客の滞在に伴う汚水・糞尿処理は、瀬戸内町を含む奄美大島全自治体が行います。

ロイヤルカリビアン社が計画している独占リゾート地は、世界自然自然遺産の周辺管理地域に指定された場所であり、世界自然遺産登録審査に大きな影響を及ぼしかねない問題であるため、瀬戸内町だけの判断で決められる問題ではないはずです。世界自然遺産に登録できるような奄美大島の大自然と文化を壊しかねないこの計画が、住民にはもとより、周辺自治体に全く計画内容が知らされていないこの状況は異常だと思われます。この計画自体がすでに「奄美ブランド」を傷つけているものなのです。

●生業に関わる漁場が一つ失われます。

 ●その他、懸念される問題が多くあります。

○実際に誘致自治体では密輸、密入国などの問題も起きていて、治安の悪化が懸念されます。

○宿泊及び食事もすべてがパッケージされているため、地元企業の入る余地が少ないです。

○外国人観光客がメインのため、言語の問題をクリアして地元の人間の雇用が生まれるのでしょうか。

○雇用される外国人を含む300~500人が住むエリアと住民のエリアができることにより、今までの集落の営みが変化します。

○単一の国に依存した事業のため、社会情勢の変化による破たんの可能性が高いと思われます。

この場所に、週に1万5000人以上の乗客がやってくる大型クルーズ船の寄港地を作るとなるとさまざまな問題が予想されます。

30数名程の集落に週1万5000人以上の人間が訪れるこの計画は、どう考えても集落及び町のキャパシティを超えています。

 現在、奄美大島に訪れる観光客の皆さんは、手つかずの自然とゆったりとした島ならではの時間を目的にいらっしゃっています。

住む人、訪れる人、すべての人々が幸せな時間を過ごせるよう、今一度、西古見集落へのクルーズ船誘致を考え直していただきたいと思っています。